2012年 6月16日 「遺留分の考え方と減殺請求後の攻防について」

遺留分の考え方と減殺請求後の攻防について(2012年6月16日)

page-image_00111.遺留分
2.遺留分権利者と遺留分の割合
3.遺留分算定の基礎財産
4.遺留分侵害額の算定
5.遺留分減殺請求
6.遺留分に関する紛争の特色
7.遺留分減殺請求の行使方法
8.減殺請求後の攻防
9.生命保険金
10.遺留分減殺請求権と寄与分との関係

 

1.遺留分

相続に際し、一定の法定相続人に対して、法定相続分の一定割合を保証する制度。

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2.遺留分権利者と遺留分の割合

ア.直系尊属のみが相続人である場合     被相続人の財産の3分の1  
イ.それ以外の場合             被相続人の財産の2分の1
ウ.兄弟姉妹には遺留分は無い

法定相続分と遺留分

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※兄弟姉妹には遺留分はないので注意!
以下、攻撃側(減殺請求権を行使する側)をX、防御側(行使される側)をYと表示する。

 

3.遺留分算定の基礎財産

(1)被相続人が相続開始時に有した財産
(2)遺贈(民法第1031条)
(3)死因贈与
(4)生前贈与

ア.相続開始前の1年間にした贈与(民法第1030条)
イ.遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与(民法第1030条)
ウ.負担付贈与(民法第1038条)目的の価額から負担の価額を控除したもの
エ.不相当な対価による有償行為(民法第1039条)
当事者双方が、遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、贈与とみなす。この場合、相続開始の1年以上前のものも含める。正当な時価と対価との差額を遺留分算定の基礎財産とする。
オ.相続人に対する贈与
相続人が特別受益となる贈与を受けている場合は、相続開始の1年以上前の贈与であっても、遺留分算定の基礎財産に算入し、減殺の対象とすべき(民法第1044条による民法第903条の準用)
※ 持戻免除の意思表示がある場合
被相続人が特別受益の持戻免除の意思表示(民 法1044条、903条3項)をしていた場合であっても、共同相続人間の平等を確保するという遺留分制度の趣旨に照らせば、遺留分の基礎財産の算定におい ては、持戻免除の意思表示は効力を有しないものとしても民法1030条の定める制限なしに、相続人に対する贈与の価額を、遺留分算定の基礎となる財産の価 格に算入すべきである(大阪高判平成11.6.8高民52巻1項)
カ.果実(民法第1036条)
減殺の請求があった日以降の果実(賃料など)の返還を要す
※ 減殺請求の対象に収益物件がある時は、Xとしては、果実の返還につき言及すること。
※※ Y側は、賃貸借の場合などにつき、経費控除を主張する。

 

4.遺留分侵害額の算定

遺留分侵害額=[(相続開始時の財産価額+贈与価額-債務額)×総体的遺留分×
各遺留分権利者の法定相続持分割合]-特別受益価額-相続によって得た財産額+負担すべき相続債務額 

 

5.遺留分減殺請求

被相続人が遺留分を侵害する贈与や遺贈をしても、それが当然無効になるわけではない。
遺留分権利者に、遺留分を保全するに必要な限度で、贈与及び遺贈の減殺を請求する権利を与える。

遺留分減殺請求権
行使期間・・・遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は、遺贈があったことを 知ったときから1年間に行使しなければならない。(配達証明付内容証明郵便で行なうのがよい)
※減殺請求権を行使しない者がいても、他の者の遺留分が増えるわけではない。
※遺言書を開示しないと、減殺すべき贈与・遺贈が分からないので、1年間の時効期間が進行しない。

 

6.遺留分に関する紛争の特色

法的手続を経ないで、協議のみで解決するのが困難。
(理由)一応もらっているので、その中から返すのに、抵抗を示す。
侵害した者と侵害された者との感情的対立。

 

7.遺留分減殺請求の行使方法

(1)減殺請求をすることにより、贈与又は遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し、受贈者又は、受遺者が取得した権利は、その限度で当然に遺留分権利者に帰属する。

(2)遺留分減殺を前提とした遺産分割調停の申立

(3)訴訟手続
ア.目的物の給付請求(Ex.持分移転登記手続訴訟、目的物の引渡請求)
イ.所有権ないし共有持分権確認訴訟
ウ.価額請求訴訟(但し、価額弁償は、Yから価額弁償の意思を表明した場合のみ許される)

 

8.減殺請求後の攻防・・・現物返還か価額弁償か

(原則)・・・現物返還
遺留分返還請求権が行使されると、受贈者又は受遺者が取得した権利は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺留分権利者に帰属する。

(例外)・・・価額弁償
受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は、遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。(民法第1041条1項)
・Y側の選択による。
・各個の財産について、価額弁償が可能
・遺留分権利者(X)の側から価額弁償請求権を行使することは許されない。(Xからの権利を認めた規定なし)

※不動産が、田舎の流動性の乏しい自宅(不動産)などの時は、Yが「現物返還」の主張をし続けると、Xにとって不利益。(Xとしては、Yに価額弁償をしてほしいのが本音)

 

9.生命保険金

(ⅰ)被相続人を被保険者とする生命保険契約において、保険金受取人が「相続人」と指定されていたときに、相続人が取得した生命保険金は特別受益財産に当たるか。

本件生命保険契約は、Aが相続人すなわち、Yらを受取人として指定した第三者のためにする契約であるから、Yらは、Aの死亡により、上記契約による保険金請求権を固有の権利として原始的に取得したものであり、上記契約の締結は、文理上、民法第1044条が準用する同法第903条所定の遺贈又は婚姻、養子縁組のため、若しくは生計の資本としての贈与に該当せず、かつ、その保険金受取人に指定されたYらが相続に関わりなく、保険金請求権を取得することが、被相続人の契約意思に合致するものと解されるから、Yらが受け取った上記保険金は、特別受益にあたらないものと解するのが相当である。

生命保険・・・・固有の権利であり、遺産とは異なる。

(ⅱ)特別受益の事例での、最高裁の決定
(例外的な場合もあり得ることに触れている)⇒(相続人間の不公平が著しい特別な事由にあたるか)

最高裁(最決平16・10・29民集58・7・1979、判時1884・41ほか)
同決定は、死亡保険金請求権が相続財産に属するものでないことに加え、被保険者が死亡した時に初めて発生するものであり、保険契約者の払いこんだ保険料と等価関係に立つものではなく、被保険者の稼働能力に代わる給付でもないことから、実質的に保険契約者または、被保険者の財産に属していたとみることができないことを挙げて、死亡保険金請求権は民法第903条1項の遺贈または贈与に係る財産には当らないと解するのが相当であると判断した。

その上で、死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は、被相続人が生前保険者に支払ったものであり、保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどに鑑みると、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法第903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当であるとした。

※ 上記判例は、生命保険金と特別受益の持戻しの事例
※※まだ、多額の保険料を支払ったときの生命保険金が遺留分減殺請求の基礎財産となるかについて最高裁判例は、出ていない。

 

10.遺留分減殺請求権と寄与分との関係

遺留分減殺請求訴訟において、被減殺者(Y)が、寄与分があることを抗弁として主張する ことができるか?

最高裁平成11年12月16日判決(民集53巻9号1989貢)は、原審が次のとおり判示した部分につき、正当と是認できると判示して、消極説を採用することを明らかにした。これにより、この点については、消極説によることが確定した。
「寄与分は、共同相続人間の協議により定められるものであって、遺留分減殺請求に係る訴訟において抗弁として主張することは許されない。」

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